新型コロナウィルスの臨床像
必要以上に恐怖心、不安感を抱くことがないように、皆様ひとりひとりが適切な行動をとれますように、現時点(令和2年8月15日)で判明している新型コロナウィルス感染症について説明します。主として「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第2.2版」「職域のための新型コロナウィルス感染症ガイド・第3版」を参考にしています。
▍感染経路
飛沫感染が主体です。換気の悪い環境では、咳やくしゃみなどがなくても感染します。接触感染もします。有症者が感染伝播の主体ですが、無症状病原体保有者からの感染リスクもあるとされています。
▍潜伏期間・感染可能期間
潜伏期間は1~14日間ですが、ウィルス暴露から5日程度で発症することが多いとされています。感染可能期間は発症2日前から発症後7~10日間程度です。感染力は発症数日前から発症直後が最も高いと考えられています。発症後7日間程度で急激に低下します。
▍臨床像
発症から1週間程度
・発熱、呼吸器症状(咳、咽頭痛、鼻汁、鼻閉)、頭痛、倦怠感、嗅覚味覚障害
・風邪やインフルエンザと区別できない
・解熱薬や鎮咳薬などの対症療法を必要な時のみ行う
・80%は軽症のまま治癒
1週間から10日
・呼吸困難、咳、痰
・肺炎症状が増悪して入院が必要
・抗ウィルス薬(レムデシビル)やステロイド薬(デキサメタゾン)の投与
・酸素吸入を行う
10日以降
・人工呼吸管理のため集中治療室への入室が必要
・全体の5%にあたり、2~3%で致命的となる
▍検査方法
現在の感染の有無の評価:PCR検査、抗原検査 過去の感染の有無の評価:抗体検査
▍重症化のリスク因子
65歳以上の高齢者、慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満
要注意:生物学的製剤の使用、臓器移植後やその他の免疫不全、HIV感染症、喫煙歴、妊婦、悪性腫瘍
▍とるべき行動
・換気を良くして、距離をとり(2m)、周囲に人がいる場合は常時マスクをする
・手洗いをこまめに行い、多くの人が触れる場所はアルコール消毒する
・発熱しても慌てずに、脱水や呼吸状態の悪化に気をつけながら経過をみる
・薬がすぐに必要な場合は限られ、感染力の高い発症直後には人との接触を減らす
・呼吸状態の悪化の目安は呼吸数毎分30回以上、酸素飽和度96%未満(成人の場合)
・重症化のリスク因子(上記参照)がある場合は、より注意が必要
・PCR検査を受けられなくても、症状が出てから8日かつ症状が消失してから3日経過すれば通常生活可能(コロナ感染者と診断された場合は別の基準あり)
・逆に、1日でも発熱したら、8日かつ症状が消失してから3日経過するまで自宅待機することが望ましい
・喫煙者は禁煙する
・持病のある人は定期通院を行い、病状をしっかりコントロールしておく
・十分な睡眠、バランスの良い食事、こまめな水分補給、運動習慣の継続
・不足している場合は、ビタミンA、ビタミンD、亜鉛、セレンの摂取
▍濃厚接触者の定義
患者(確定例)の感染可能期間(発症2 日前~)に接触した者のうち、次の範囲に該当する者
・患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・適切な感染防護なしに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた者
・患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・その他:手で触れることのできる距離(目安として1m)で、必要な感染予防策なしで、患者(確定例)と15 分以上の接触があった者( 周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)
*濃厚接触者となった場合はPCR検査を受けることになります。陰性でも14日間の健康観察が必要です。