インフルエンザ

インフルエンザはご存じの通り、インフルエンザウィルスによる急性熱性感染症です。日本では気温が下がり乾燥する冬に流行しますが、最近では1年を通して散発的にみられます。インフルエンザウィルスにはA、B、C、D型がありますが、診断が可能で、ヒトで問題となるのはA、B型です。ウィルスは変異するので、年によって流行する種類が異なります。

▍発症のメカニズム
インフルエンザウィルスに感染したヒトが吐き出す咳やくしゃみの中にウィルスが混じっていて、それを他の人が吸い込むことで、ヒトからヒトへと感染が広まっていきます。これを飛沫感染といいます。潜伏期間は通常1~3日です。

▍症状
突然の高熱(通常38℃以上)、頭痛、全身のだるさ、筋肉や関節の痛みなどの全身症状が先にあらわれ、咳、鼻水、喉の痛みなどの風邪症状が後に続くのが特徴です。多くの場合は、治療の有無に関わらず1週間程度で自然治癒しますが、まれに脳症や肺炎などを合併し、重症化することがあります。

▍診断
地域での流行や患者との接触歴を確認し、典型的な症状でインフルエンザを疑います。次にインフルエンザ迅速診断キットで抗原陽性を確認します。

▍治療
現在、使用できる代表的な抗インフルエンザ薬は以下の通りで、ウィルスの増殖を抑える薬です。発症後48時間以内に使用開始することが望ましいとされています。どの薬を選択するかは個人によって異なりますので、医師と相談してみて下さい。

分類 作用機序 商品名 投与経路 予防適応
M2蛋白阻害薬 脱核を阻害 シンメトレル 経口 あり
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬 mRNAの合成を阻害 ゾフルーザ 経口
RNAポリメラーゼ阻害薬 mRNAの合成を阻害、ゲノムの複製を阻害 アビガン 経口
ノイラミニダーゼ阻害薬 宿主細胞内で増殖したウィルスの遊離を阻害 タミフル 経口 あり
イナビル 吸入 あり
リレンザ 吸入 あり
ラピアクタ 点滴静注


▍予防

マスクを着用し、手洗いを行うことは、ウイルスとの接触や体内への侵入を減らすことに役立ちます。また、インフルエンザになってしまったら、他の人に感染を拡大させないために、感染者は発症してから5日間、熱が下がってから2日間の自宅療養をすることが望ましいとされています。

▍インフルエンザワクチン
高齢者、基礎疾患(呼吸器疾患、心疾患、糖尿病、腎機能障害など)のある患者、医療従事者などは、接種をすることが勧められています。