鉄欠乏性貧血

鉄が体内で不足することでおきる貧血を鉄欠乏性貧血と言います。女性の貧血の多くは鉄欠乏性ですが、他の怖い病気が隠れていることもあるので、きちんと調べてから治療を開始しましょう。

▍症状
鉄欠乏性貧血はゆっくりと進行することが多いので、自覚症状に乏しく気づきにくいです。健診で貧血を指摘され、はじめて気づくということもあります。貧血が高度になると動悸、息切れ、疲れやすいといった症状が出ます。また、舌炎や口角炎ができやすかったり、氷をかじりたくなったりするのも症状の一つです。

▍原因疾患
鉄の供給と喪失のバランスが崩れると、貯蔵鉄が減って鉄欠乏になります。

鉄の需要増大:成長期、妊娠、授乳
鉄の過剰喪失:月経、出血
鉄の供給量減少:偏食、摂食不良

月経のある女性では過多月経や子宮筋腫が多く、男性および閉経後女性では消化管出血が原因のことが多いです。ピロリ菌による萎縮性胃炎の関連も考えられています。

▍検査
採血検査で調べることが可能です。ヘモグロビン濃度が基準値以下の場合は貧血です。
鉄欠乏性かどうかの判断には赤血球指標(MCV、MCH、MCHC)の他に、血清鉄値、貯蔵鉄を反映するフェリチン値、補助診断として総鉄結合能を使用して、総合的に診断します。

▍治療
鉄剤による治療は内服と静脈注射がありますが、第1選択は内服治療になります。

鉄剤を内服する時は、タンニン、マグネシウム、胃酸分泌抑制薬と一緒に摂取すると鉄吸収が低下するので、注意が必要です。また肝臓が悪い人には原則的に鉄剤は投与しません。

鉄剤内服開始後、6-8週間でヘモグロビンは正常化しますが、貯蔵鉄であるフェリチン値が回復するまでは治療継続が必要です。過量の鉄は毒になるので、摂取しすぎは禁物です。

▍食事
食品に含まれる鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があります。ヘム鉄の方が、吸収率が高くて、赤身肉、レバー、魚、貝類に多く含まれています。非ヘム鉄は青菜、大豆製品、豆類に含まれており、ビタミンCが豊富な野菜や果物と一緒にとると吸収率が高まります。